中暗色の水色ほどベトナムらしい色はない。
少し前のベトナムでは大抵の家屋は水色かクリーム色に彩られていた。
華僑の影響を大きく受けたベトナムだが、中間色で塗られた家屋はベトナム固有の色感覚と思う。亜熱帯から熱帯にかけての穏やかな気候にとても似合う色だと思った。
タイや華南中国などの隣国を思い起こしてみる。
中華文化圏の家屋の色使いはより控えめな印象を持つ。環境から家屋の色彩が浮かび上がらないようなイメージだ。
インド文化圏のタイやカンボジアではどちらかというと天然色が好まれる。
古典的な民家は高床式の木造家屋で、家屋全体は天然木の色彩を残すか、色彩が施される際は朱をまとうことが多い。
この涼しげなベトナムの色彩、壁が漆喰の場合は、石灰を水で溶き染料を混ぜた塗料を西洋箒のような大きな筆で塗っていく。板壁の場合は揮発性のペンキを塗り仕上げる。
表紙の写真は旅の途中に立ち寄ったメコンデルタの民家。壁のポートレートは仏教の流れをくむベトナム固有の宗教、ホアハオ教の始祖。(Ken)