闇夜

街から闇がなくなった。

サイゴンから中華街ショロンに行くには、ベンタン市場前のバス停留所から市内バスに乗るといい。
何十年も変わらないバス路線に沿い、一本道をゆっくりと街を西に移動すると、次第に街の佇まいが変わっている様を見ることができる。

ショロンはベトナム語の「Chợ Lớn」をフランス語読みした名称で、大きな市場という意味を持つ。中国語で「堤岸」と呼ばれるこの問屋町は、メコンデルタに繋がる運河の北側に街が形造られ、今でも多くの華人が暮らしている。

「大きな市場」や「堤岸」という呼称の通り、ショロンの運河沿いには古風な穀物倉庫が立ち並び、季節になると果物や穀物袋を満載した船が運河に係留されている。荷揚げされた青果は街のあちこちの卸市場まで運ばれていく。穀物は運河沿いの倉庫に運び込まれる。

この運河界隈は夕方になるとひっそりと静まりかえり、点在する街灯と倉庫のシルエットが目に入るばかりだ。
ここに来ると昔のモノクロのギャング映画を思い出す。日本のではなく欧州のギャング映画だ。しかし残念なことに、映画のシーンを思い出させてくれる街は少なくなったものだと思う。

夕刻の運河の写真はショロンで、漆喰塗りの家に明かりが灯る風景はメコン河流域の街で撮影しました。(Ken)

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