蓮(ハス)の葉のお話

多くの植物と同じようにハスにも新芽の息吹と落葉がある。
早春のころ、池の泥底に沈む茎から人知れずの芽が生え、まっすぐと水面にむかって延びていく。芽は水面にでるとゆっくりと開き、誰もが見知っているあの丸い葉になる。
初夏、ハスの葉は水面を覆い、点々と浮かぶ葉のあいまからあの可憐と言うには少し大ぶりな蕾が顔をだす。人がハスに興味を向けるのは開花時期の夏で、秋になるとハスは人の注意を惹くことなく、やがて冬を迎える。晩秋の午後、水面にジグザグな影を落とす茎のぶっきらぼうな形は、何とも言えないもの悲しさを訴える。

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インドシナ、雨後の蓮池。
早朝、漁師の小さな船が櫂いっぽんで漕ぎだし、蓮葉のあいだを行き交う。漁師は子供のこともあれば女性だったりもする。彼らはハスの茎や蕾を摘む。また水底に沈めてあるドウと呼ばれる漁具に魚が入っているか調べに行ったりする。
ドウは竹で編んだ筒で、ウナギが一度入るとモンドリに遮られて出てこれなくなる仕組みを持つ漁具。日本では「もじり」や「鰻筒」と呼ばれている。

ハスの葉はインドシナの暮らしにもよく溶けこんでいる。
葉の上に食べ物を載せたり、葉で包んだりする光景は田舎でよく見かける。田舎の市場にいくと、まだ動いている透明な川海老が葉の上にこんもりと盛られている。日本の素麺ににているブン(bun)やノンバンチョクも葉の上に渦巻き状に並べられていたりする。薄暗いトタン屋根の下、土のまま通路を歩いていたら、おもいがけなくハスの葉が目の前の通路に敷いてあった。朝のスコールで雨水が溜まってしまったので、蓮の葉を何枚かかぶせ、水たまりの上を歩けるようにしてあるのだ。泥のなかを歩くのはだれでも好きではないのだ、と思った。

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蓮の葉が市場に届けられたところ。
ハスの葉は、食用にも用いられる。先端に蕾がつく蓮の長い茎はシャキシャキした食感で、和え物や鍋の具材になることが多い。
また、調理器具としても万能だ。米やおかずを葉に包んで蒸し上げたり、煮ものを作る時は鍋の底に葉を敷いておくと、食材に蓮のかすかな香りが移ったりして良い。乾燥した葉は中華街で売られているので、日本でも試してみたい料理方法だ。

トップの写真は百合の茎とハスの実のまぜご飯。豚バラ肉と百合の茎を、魚醤とココナツのカラメルで煮込み、一度冷めたところで、炊きあがったご飯と一緒に蓮の葉に包み、二十分ほど蒸す。ハスの実は細かく砕き、あらかじめ米と一緒に炊いておく。(Ken)

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百合の茎と蓮の実のごはん。味付けは魚醤とココナツのカラメル。印度シナに移住した華僑の食事をイメージしました。